別居の正当理由
夫婦には同居義務があり、正当な理由がなく一方の配偶者が別居に踏み切ったときには、同居義務違反となり、場合によっては法律上の離婚原因である悪意の遺棄に当たる可能性もありますので注意が必要です。
正当な理由による別居には、下記のような場合が相当します。
- 夫婦の合意による別居
- 一時的な冷却期間を設けることが、修復のため望ましいもの
- 既に婚姻関係が破綻しているような場合
- 相手方による暴力や不貞行為、借金によって同居が困難であるとき
別居と生活費
別居をしている間でも、お互い生活費(婚姻費用)を負担する義務があります。たとえ一方の配偶者が実家に身を寄せていても、従前より負担していた金額のほか医療費や教育にかかわる特別の出費についても、一定の負担をしなければなりません。
もしも支払いがされなかったときは、余分に負担した金額の合計額を、離婚時に財産分与に上乗せして請求することができます。また別居中の生活費に困ったときは、調停を申し立てて支払いの請求をすることができます。
別居と親権
乳幼児の子どもがいる場合における離婚では、母親が親権を取るのが一般的です。裁判でもよほどの理由がない限り、そのような判断がなされています。
ただし子どもを置いて別居を開始し、一定期間経過によって子どもがその養育環境に馴染んでしまった後においては、親権を取るのが難しくなるケースがありますので、別居の際には、子どもを手もとに置いておくと安心です。
別居にあたっての注意点
別居が長引きそうなとき
別居が長引きそうなときは保険証が使えるように、市区町村役場または健康保険組合に対し、「遠隔地被保険者証」を発行してもらえるよう手続きをしておくことをお勧めします
また上記のとおり、別居中であっても婚姻費用(生活費)をもらう権利がありますので、支払額や子どもとの面会などの取決めをしておくことが必要です。公正証書を作成しておくと不払い時に、相手方の給料の2分の1まで(養育費以外は4分の1まで)、まだ支払期限のきていない分を含め、差押えることができます。
財産の持ち出し
過去の裁判例で、自己の持分に相当する金額の相手方の現金・預金を持ち出して使っても、不法行為には当たらないとしたものがありますが、離婚時、財産分与額がその分減る可能性があります。
できましたら相手方から生活費(婚姻費用)をもらったり、貯めてあったへそくりを別居中の費用とするのが無難です。
別居期間と有責配偶者からの離婚請求
婚姻関係の破綻原因を作り出した側からの離婚請求であっても、これを認める裁判例が存在します。
別居期間が長期(8年程度)であり、一方配偶者の今後の生活に心配が無い手当てがなされ、就労前の子どもがいないなどの条件のもと認められています。