離婚協議の内容は公正証書に
公正証書の性質や注意点など、その利用について解説しています。
1.公正証書と離婚協議書(覚書)との違い
2.公正証書による強制執行の対象(効力の及ぶ範囲)
3.公正証書の作成と費用負担の合意
4.公正証書作成にあたって注意すべきこと
公正証書と離婚協議書(覚書)との違い
当事者だけで取り交わす離婚給付等契約書(離婚協議書)や覚書きの類は、支払い義務者が約束に反して養育費等の支払いを怠った場合、強制的に取り立てようとすると裁判などの手続きが必要になります。
せっかく契約をしたにもかかわらず、裁判にかかる費用や時間から多くの方が取立てを諦めてしまっています。
相手方の給料や財産から強制的に取り立て
公正証書は単なる契約書や覚書きと違い、その作成に国の設置した機関が関わっているため、裁判をせずに強制執行手続きに移ることができます。
また支払い義務者から見れば、給料が差し押さえられると会社に養育費等の不払いの事実を知られることとなるため、これにより強力な不払い抑止の効果が期待できます。(会社を辞めてしまうリスクがあるときは、預金などの保有財産から取り立てます)
公正証書による強制執行の対象(効力の及ぶ範囲)
公正証書に記載された義務について不履行があったときは、下記の目的に対する請求が強制執行の対象債権となります。
- 定額の金銭支払い (養育費月額5万円、慰謝料200万円など金額が決まっているもの)
- 一定数量の有価証券の給付 (株式50株、国債5口など)
- 代替物の給付 (金塊1kgなど)
「子どもに会わせる」、「不動産を引き渡す」、「自動車を引き渡す」などの取決めについては、強制執行の対象とされていません。
公正証書の作成と費用負担の合意
公正証書の作成は、書類準備を準備して最寄の公証役場にご当事者が出向いて調印をした後、正本を受取る際に窓口で公証人手数料を現金で支払うことにより行なうことができます。
公証役場において要する平日30分程度の時間確保と、専門家や公証役場に支払う費用の負担割合についても、離婚協議の場で合意を取り付けておいてください。
公正証書作成にあたって注意すべきこと
清算条項について
離婚協議書においてもそうですが、公正証書には「双方に債権債務はない」旨の記載がなされ、今後お互いに離婚について一切の金銭的請求をしない・受け付けないとの規定が付されます。
公正証書作成の際には、権利主張をすべき事項に見落とし・漏れが無いかをしっかり確認してください。 ▼ 離婚成立後に判明しがちな事柄
強制執行認諾条項について
公正証書の正本を用いて強制執行をすることを可能にする要素の一つに、支払い義務者が支払いを怠ったときは、受給権利者からの強制執行を承諾する旨の文言、いわゆる強制執行認諾条項があり、公正証書にこれが入っていることを要します。