イメージ 強制執行 ~養育費の特例と手続き~

公正証書などで約束した養育費や慰謝料の支払いがストップしたときに、やむなく行なう強制執行の手続きと養育費の特例について解説しています。

1.強制執行で実現すること
2.公正証書による強制執行の対象債権と条件
3.養育費などの取立ての方法(強制執行手続き)
4.養育費の特例について

強制執行で実現すること

公正証書、調停調書または裁判の確定判決等によって、慰謝料や養育費を支払うべきとされた側が、期日までに支払わないときに、裁判所(執行官)が支払い義務者の預金、不動産、自動車等の財産や給料を差押えてそこから強制的に取立てがなされます。

自動車などの財産は競売によって現金化され、給料は相手方の勤務先からそれぞれ取立てが可能となります。強制執行ができる条件は下記のとおりとなっています。

公正証書による強制執行の対象と要件

強制執行の対象となる債権

公正証書に記載された契約内容のうち、養育費など一定額の金銭の支払い、もしくは株式などの有価証券の給付、一定数量の代替物(金5kgなど)の給付をしてもらう権利が強制執行の対象となります。子どもとの面会、土地・建物、自動車を引き渡す約束については、強制執行ができません。

強制執行をするための要件

公証役場で下記の手続きを行なった後、裁判所で強制執行手続きを行ないます。

(1)執行文の付与
支払い義務者が不払い時には直ちに強制執行に服することを認める、執行認諾条項が公正証書に入っていても、まず公証役場で公正証書の正本に執行文の付与をしてもらい、強制執行の段階にあることを証明してもらいます。

(2)債務名義の送達
強制執行の前に、債務者に対して公正証書の謄本を送達してもらい、送達証明書の交付を受けます。通常公正証書の作成時に相手方も公正証書の正本を交付されていますが、上記の執行文の付与と共に民事執行法に定められたルールとなっています。

養育費などの取立ての方法(強制執行手続き)

強制執行により未払い分を取り立てるには、差押えるべき財産等を裁判所に指示しないといけません。その指示の程度は、給与差し押さえには勤務先に所属している証拠となるもの、預金口座であれば銀行の支店名など、また不動産であれば登記簿謄本などで債権・所有関係を明らかにします。

強制執行の手続きは、債務者の住所地を管轄する裁判所へ申立てを行ないます。
申立てに必要な書類や費用は下記のとおりとなっています。

  • 裁判所備付の申立書(記載例に従い作成)
  • 公正証書(執行文付)の正本
  • 送達証明書(公証役場で発行)
  • 費用約1万円(申立て手数料、切手代)
  • 当事者の住所・氏名の変更について公正証書を作成した当時から現在までのつながりを明らかにするもの (住民票の写し、戸籍謄本、戸籍の附表等)
  • 給料・預金差押えのときは、会社・銀行の商業登記簿謄本(法務局で発行)
  • 自動車競売の場合、1台につき10万円の予納金と自動車登録事項証明書
  • その他

養育費の特例について

慰謝料債権などにおける、給料・ボーナス・退職金に対する強制執行については、給与等の支給額が33万円以内の場合はその4分の1までしか差押さえができません。(但し33万円以上の高額収入者に対しては、その超えた部分の全額に差し押さえ可能)

養育費特例将来の支払い分も差し押さえ可能
養育費(婚姻費用を含む)については、2分の1まで差押さえが可能となっています。また将来の支払い分についても、債権執行を開始することができるため、滞納のたびにその都度何回も強制執行手続きをする必要がありません。つまり、養育費支払い終期まで毎月天引きする形にすることができます。

養育費給料への強制執行は慎重に
相手方の生活が著しく窮迫する状態にあるときなど、支払能力を欠く場合には強制執行が不発に終わる可能性がありますので、相手方が会社を辞めてしまい差押え原資が消滅する事態とならないよう、強制執行の判断には細心の注意を払ってください。

コツ強制執行を成功させるコツ
強制執行により満足を得るためには、情報収集が欠かせません。相手方の勤務状況や財産の取得状況について情報を得られるようにしておくことは非常に大切です。特に財産の取得時などは狙い目となります。

なお給料の差押えをするときは、あらかじめ相手方に警告の文書などを送り、職場で不利な処遇を受けることにならないかあらかじめ探りを入れることも必要になってきます。

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